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ヘール加工とは?真空用途でニーズが高まっている特殊ヘールバイトをご紹介

ヘール加工は、溝加工やシール面加工においてツールマークを残さない精密加工技術です。特に、真空チャンバのような高い気密性が求められる用途でその威力を発揮します。本記事では、ヘール加工の概要から、ヘール加工とスーパーヘール加工の違い、真空用途で重要性が増すヘールバイトの技術的な特徴や、東鋼が提供する特殊ヘールバイトの納品実績や独自技術、実際に当社で製作した特殊ヘールバイトの実績まで、詳しく解説いたします。

ヘール加工とは?

ヘール加工は、マシニングセンターでバイトを進行方向に平行に動かす特殊な切削方法です。ヘール加工は製品の突端平面加工やシール面の溝加工にも利用されます。

ヘール加工の最大の特徴は、バイトを回転させずに直線運動で加工するため、ツールマークが残らない非常に精密な仕上げが可能な点です。従来のエンドミルによる加工では、円弧状の切削痕が残るため、これが真空保持を妨げる原因となり得ました。しかしヘール加工を用いることで、カンナのように切削加工をすることができ、ツールマークのない仕上がりが得られ、高真空および超高真空状態を保つことが可能です。

ヘール加工は、高気密パッキン溝のシール面加工で効果を発揮します。従来は、エンドミル加工後にシール面を手作業で仕上げる必要がありましたが、ヘール加工ではツールマークがない表面を得られるため、仕上げ工程を省略することができます。ヘールバイトは一様に刃先が直線であり、また近年は素材の進化に伴い、より硬い素材を使った直線型のバイトが増えています。このように進化したヘール加工用のバイト(ヘールバイト)を用いることで、ワークへのビビリや食い込みを防ぎつつ、安定した高精度加工が実現します。

 

ヘールバイトの特徴

ヘールバイトは、高精度な溝加工やシール面加工を可能にする特殊な切削工具であり、特に真空用途や高気密性が求められる場面で使用されています。一般的なエンドミルとは異なり、バイトの刃先を直線的に動かすことで、ツールマークを残さない滑らかな仕上げが得られる点が大きな特徴です。

また、ヘールバイトは一様に刃先が直線で、ワークへのビビリや食い込みなどを抑制するためにシャンク部をバネ状にしている点が特徴です。ヘールバイト特有のU字溝によるバネ形状によって、切削加工時に刃先に強い力が加わった際に、シャンク部によるスプリンク機能によって、切削力の変化に応じて刃先を逃がす作用が働き、被削材への食い込みを防ぐことができます。さらに、このバネ形状によってビビリ抑制にもつながり、平滑な仕上げ面にすることが可能となります。

 

ヘール加工とスーパーヘール加工の違いとは?

ヘール加工とスーパーヘール加工は、どちらも精密加工技術ですが、加工の精度や用途において異なる特徴を持っています。

まず、ヘール加工は、主に溝加工やシール面加工において、ツールマークを残さない滑らかな仕上げを実現する技術です。ヘール加工では、バイトを回転させず、進行方向に直線的に動かすことで高精度な切削を行います。真空チャンバや高気密性が求められるパッキン溝加工で多く採用されており、従来のエンドミル加工よりも高い精度を実現します。

一方、スーパーヘール加工は、従来のヘール加工をさらに高度化させた技術です。主な違いとして、より高い面精度を実現することが挙げられます。スーパーヘール加工は、特に超高真空状態を必要とするシール面や、厳しい表面粗さ要件が課される部品に対応できる技術です。このスーパーヘール加工技術は、牧野フライス製作所によって開発されました。

>>スーパーヘール加工(株式会社牧野フライス製作所)

 

真空用途でのヘールバイトの重要性

半導体製造装置や理化学機器で使用される真空チャンバーや真空バルブ、各種圧力容器等の真空用途の部品や製品では、非常に高い気密性と精密な表面仕上げが求められます。特に、シール面やパッキン溝の加工において、ツールマークを残さない滑らかな仕上げが不可欠です。エンドミルなどの回転工具を使用した場合、切削痕が円弧状に残り、その切削痕から気体が浸入する可能性があります。これが真空状態の維持を困難にし、システム全体の性能を低下させる要因となります。

ヘールバイトは、こうした問題を解決するために設計された工具です。バイトの刃先が直線的に進行方向へ動くため、ツールマークが残らない均一で滑らかな加工面が得られます。これにより、真空チャンバの高真空状態を維持することが可能となり、特に医療機器や半導体製造装置など、非常に高い精度が要求される真空分野での使用に適しています。

さらに、真空装置や精密部品の製造には、高気密パッキン溝の加工が欠かせません。従来のエンドミル加工では、切削後の仕上げ作業として手作業で磨く工程が必要でしたが、ヘールバイトを使用することで、この仕上げ作業が不要になり、工程の省略と生産効率の向上が実現します。

 

東鋼だからこそ可能な特殊ヘールバイト製造

当サイトを運営する株式会社東鋼は、他社にはない技術と実績で、特殊ヘールバイトの製造において一歩先を行く存在です。特に、以下の3つのポイントで東鋼の特殊ヘールバイトについて語ることができます。

 

大手工作機械メーカーとの引合い・納品実績

当社は、大手工作機械メーカー各社からも高い信頼を得ており、過去には某大手メーカーの本社開発部からの引合いを受け、その後海外にも社内展開いただいた実績があります。

また、産業用シール製品メーカーへの納品実績もございます。このような実績により、東鋼の特殊ヘールバイトは国内外問わず技術力と信頼性が裏付けられています。

 

ホルダー開発によるビビり対策

東鋼では、特殊ホルダーを用いたビビり対策が施されたヘールバイトを提供しています。一般的なヘールバイトでは、加工時の振動や不安定さを防ぐためにバイトを曲げる必要があることが多いですが、東鋼のヘールバイトはこの曲げ加工を不要とし、より安定した高精度な加工を実現します。ホルダーがビビりを抑え、バイト自体が安定した切削を可能にするため、特に高精度が求められる加工において、その効果は顕著です。

 

特殊形状のヘールバイトへの対応力

上記のようにホルダー段階でビビり対策が施されているため、東鋼では、ばね付き形状ではなく、特殊形状ヘールバイトの製作に対応しています。特殊ヘールバイトについて、他社が対応できない仕様や設計要求に応えることができる点がポイントです。こうした特殊形状に対応できる柔軟性と技術力が、半導体や医療などの真空用途向けをはじめとした、様々な業界での引合いを集める理由となっています。

またヘールバイトは、刃物の精度がそのままワークに転写される総型工具です。当社では高い品質精度で特殊精密切削工具を製作しているため、ヘールバイトの刃先精度には自信があります。

 

特殊精密切削工具.comによるヘールバイトの特注製作事例

特殊精密切削工具.comが過去に製作したヘールバイトをご紹介します。

ヘールバイト

こちらは半導体業界で使用されるサイズが10×10×50の超硬製ヘールバイトです。現在使用するエンドミルで断面をアリ形状の溝に加工した後に手仕上げでツールマークを除去しているが、機械的に除去して作業時間を短縮したいとご依頼いただきました。特殊精密切削工具.comでヘールバイトを提案し、最適な加工条件(送り速度、切込量)についても提案しました。すると溝底のツールマークを除去することが出来、作業時間も1/3程度まで減少しました。

当社は特殊精密工具の製造メーカーですが、ただ工具を製造するだけではありません。それぞれの工具の加工条件も提案をし、その工具が持つ強みを発揮できるようアフターフォローまで行っています。創業以来積み重ねてきた圧倒的な実績と膨大なノウハウをもとに、お客様の課題を解決する技術提案を積極的に行っております。

>>詳しくはこちら

ヘールバイトの開発・設計・製作なら、特殊精密切削工具.comにお任せください

当社では、創業から86年以上、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドの工具を開発・製造してまいりました。お客様それぞれに世界一の究極の逸品の工具を作り上げることをモットーに最先端設備を揃えており、高精度な加工を実現する環境を整えてまいりました。工業界から医療業界と「人体から宇宙まで」幅広く、精度が必要な工具の納品実績が多数ございます。

ヘールバイトの開発・設計・製作なら、、「切削理論」と「材料特性」を熟知している特殊精密切削工具.comまでお問い合わせください!

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