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ハイスとは?材質の種類・特徴・超硬との違いまで解説!

ハイスとは?

ハイス(高速度工具鋼、HSS)は、工具材料の一つで、高硬度と高靭性を兼ね備えた鉄鋼材料として知られています。主に切削工具(ドリル、エンドミル、タップなど)や金型に用いられることが多く、熱と摩耗への耐性が必要不可欠な高速切削に使われています。

ハイスには、細かな種類とそれぞれの特徴があり、適したハイスの材質を選ぶことが重要となってきます。本記事では、ハイスの特徴、種類、そして超硬との違いまで解説します。

ハイスの製造方法について

ハイス鋼には、「粉末ハイス」と「溶解ハイス」の2種類の製造方法があります。それぞれ特徴が異なってきます。

①粉末ハイス

粉末ハイスは、金属の粉末を型に入れて、熱と圧力をかけて焼き固める製造方法で作られます。元となる材料は一度溶かしており、それをさらに微粉末にして焼き固めるという方法をとることで金属組織がより緻密になり、強度や靭性が優れるようになります。

②溶解ハイス

溶解ハイスは、一般的な合金鋼や工具鋼と同じで、原料を電気炉などで溶かし、成形・圧延して製造されます。この特徴としては、高い硬度を持ちながらも、適度な靭性を備えており、切削工具としての性能が安定します。

粉末ハイスと溶解ハイスを比べてみると、粉末ハイスのほうが強靭で耐摩耗性に優れ、疲労に強い靱性にとんだ鋼材となります。また、寿命も粉末ハイスの方が溶解ハイスより長くなります。
しかし、重要となるのは用途や必要な性能に応じて、適切な材料を選んでいくことです。

ハイスの材質について(種類と特徴)

ハイスは、添加されている物質の比率から、大きく2種類に分けられます。

①タングステン系

タングステンハイスは、摩耗耐性の高さが特徴です。含有割合が18%前後のものが目安で、その他にクロム(4%前後)、バナジウム(1%前後)が含まれています。この特徴を活かして、タングステンハイスは、主に一般的な切削工具に使われることが多いです。また、バイトのような旋削加工用の工具にも使用されています。代表的な鋼種としては、SKH2・SKH3・SKH4・SKH10が挙げられます。

②モリブデン系

モリブデンハイスは、5%前後のモリブデンの含有量に加えて、6%程度のタングステンも含まれています。タングステンよりも低コストですが、硬度と靭性にも優れていながら、熱処理がしやすいことも特徴です。この特徴から、一般的な切削工具だけでなく、プレス金型にも適しています。種類としては、SKH51〜58の8種類があります。

一般的に、安価で加工のしやすいモリブデンが主流となっていますが、高温に弱いという特性を持つため、その場合は熱に強いタングステンが用いられるケースが多くあります。

このように、被削材・加工方法など状況に応じて使い分けが必要となるハイスですが、特に炭素の含有量が高く、またバナジウムなど硬い炭化物を生成する元素を多量に含んでいるため、熱処理によって歪みが起きやすいという特徴があります。そのため、ハイスの性能を充分に引き出すためには、熱処理方法の選定が非常に重要となります。

超硬とハイスの違いとは?

ハイスについてここまで解説してきましたが、超硬合金も金属加工用の切削工具等に用いられる材料の一つです。
それぞれの違いを理解することでお客様に最適な製品を製造することが可能となります。

下記の表が、ハイスと超硬合金の違いをまとめたものとなります。

ハイス鋼 超硬合金
硬度

鋼の中では一番の硬度

ハイスの数倍の硬度

靭性

チッピングや折れにも強い

チッピングしやすい

耐摩耗性
耐熱性

(~600℃)

(800~1000℃)

見分け 明るい ハイスよりやや暗い
比重(g/cm³) 約8.2 g/cm³ 約13.0~15.0 g/cm³

 

設計~熱処理~製造まで一貫生産対応

特殊精密切削工具.comでは、熱処理から工具の加工まで、責任を持って対応するべきだと考えているため、熱処理設備を自社で保有しております。

熱処理とは金属を加熱・冷却することで生じる組織変化を活用し、素材の性質(強さ・硬さ・粘り・耐衝撃性・耐摩耗性)を向上させる処理方法です。

ハイスは特に炭素の含有量が高く、またバナジウムなど硬い炭化物を生成する元素を多量に含んでいるため、熱処理によって歪みが起きやすいという特徴があります。このような理由から、ハイスの性能を充分に引き出すためには熱処理方法の選定が非常に重要になります。

特殊精密切削工具.comでは、自社で各種熱処理設備を保有しております。

具体的には、

  • 大気式電気炉1台
  • 熱風式電気炉1台
  • 塩浴式電気炉4台
  • 熱処理後の洗浄装置、温度校正炉等

を保有しております。

>>>当社の熱処理設備について詳しくはこちら

>>>当社の特殊ハイス工具・設計・製造サービスについて詳しくはこちら

 ハイス工具の実績

・面取りバイト 

こちらは輸送用機器業界で使用されるサイズがφ13×100のハイス製面取りバイトです。お客様が6軸自動盤用に面取り工具を製作したいとのことで、現在は面取り作業を後工程の違う機械で行っているために工数削減をしたいとご依頼をいただきました。機械の情報を収集し、特殊精密切削工具.comでは工具が搭載される位置を確認して加工形状にあった工具形状を設計提案をしました。その結果、狙った面取り量を加工することが出来、工程削減も可能となりました。

面取りバイトについて詳しくはこちら>>>

 

4枚刃リーマ

こちらは自動車業界で使用されるサイズがφ8×80のハイス製4枚刃リーマです。ご依頼いただいたお客様のご要望として、コーティング付きで刃径公差レンジ0.005以内に抑えたリーマを検討して欲しいとのことでした。特殊精密切削工具.comではコーティング膜厚を薄膜コーティングで設定し、公差レンジ0.005以内に抑えてご提案しました。その結果、ワーク寸法に対して、安定した加工が出来ました。特殊精密切削工具.comを運営する株式会社東鋼では、刃径公差レンジ0.005でのコーティング付きリーマの製作が可能です。ぜひリーマの刃形公差でお悩みがございましたら、お気軽にご連絡ください。

4枚刃リーマについて詳しくはこちら>>>

 

特殊突切りバイト

こちらは輸送用機器業界で使用されるサイズが6×11.8×140のハイス製突切りバイトです。依頼背景としては、バネ加工機用の突切りバイトであるが、摩耗が早いために対策を検討して欲しいとご相談をいただきました。特殊精密切削工具.comでは従来お客様が使用する突っ切りバイトはSKH51で製作されていたため、硬度が高いSKH57にて提案をおこないました。材質を変更した結果、研磨1回あたりの加工数が延び、再研磨による段取りも減少しました。当社ではお客様で使用されていた工具をお借りし、硬度調査、工具材質の検証を行い、適切な工具材質の提案を行っています。また本事例のようにサンプルや製品図面をお見せいただけますと対応が可能ですので、ぜひお困りの案件がございましたら、ぜひご連絡ください。

特殊突切りバイトについて詳しくはこちら>>>

ハイス工具製作をご検討の際は、当社にご相談ください

被削材によっては超硬よりもハイスの方が工具材質として適している場合もあります。工具の使用環境や被削材、加工形状等をお伺いした上で、工具材質変更も含めた幅広いご提案をいたします。

特殊精密切削工具.comでは、創業から86年以上にわたり、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドの工具を開発・製造してまいりました。お客様それぞれに世界一の至極の逸品の工具を作り上げることをモットーに最先端設備を揃えており、高精度な加工を実現する環境を整えております。工業向けだけでなく医療向けまで、いわば「人体から宇宙まで」幅広く、高精度工具の納品実績が多数ございます。

切削工具の製造をご検討の際は、工具のよくあるトラブルや最適な熱処理方法を熟知している特殊精密切削工具.comにご相談ください。