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トレパニング工具とは?トレパニング加工を実現するために必要不可欠な工具をご紹介

トレパニング加工は、大きな穴をあける加工において、従来のドリル加工では困難だった高精度・高効率を実現する革新的な切削技術です。特に、難削材の深穴加工や高精度が要求される穴あけにおいて、その威力を発揮します。

本コラムでは、トレパニング加工の概要から、トレパニングツールの技術的特徴、従来工具との決定的な違い、東鋼が提供する特殊トレパニングツールの独自技術や納品実績、実際に当社で製作したオーダーメイドトレパニングツールの成功事例まで、詳しく解説いたします。

トレパニング(トレパン)加工とは?

トレパニング(トレパン)加工は、切削によって穴を開ける加工方法の一つです。一般的なドリル加工が穴になる部分の材料をすべて削り取るのに対し、トレパニング加工は中心部に円柱状のコア(芯材)を残しながら、ドーナツ状に外周部分を削り取って穴を開けます。

トレパニング加工には、機械式切削加工とレーザー加工の2つの方式があります。機械式では専用のトレパニング工具(ツール)を使用し、レーザー方式では複数パルスでレーザーを円状に動かしながらコア部分を切り抜きます。それぞれ適用材料や加工条件が異なり、用途に応じて使い分けられています。

この加工の最大の特長は、切削抵抗が大幅に低いことです。材料全体を削るのではなく、必要な部分だけを切削するため、工具への負荷が軽減され、高送りや高回転での加工が可能となります。これにより加工時間の短縮と生産性向上を実現し、さらに中心のコア材を有効活用することで材料コストの削減にも貢献します。

トレパニング加工は、特に深穴や高精度穴加工においてその真価を発揮します。安定した切削により優れた真円度と面粗度を実現し、医療機器部品、自動車部品、航空宇宙部品など、極めて高い精度が求められる分野で広く活用されています。

トレパニングツールの特徴

そんなトレパニング加工を実現するための専用工具が、トレパニングツールです。従来のドリルとは根本的に異なる設計で、外周部分のみを切削し、中心部にコア材を残す独特の加工を可能にします。

トレパニングツールの最大の特徴は、中心が空洞になっている構造です。この空洞部が加工時に中心コアを形成する役割を果たし、外周部分に配置された切削刃が実際に材料を削り取る部分となります。この構造により、切削面積を大幅に削減し、工具にかかる負荷を軽減できます。

トレパニングツールは、加工する材料の特性(硬度、粘り強さなど)、穴の直径、深さ、そして求められる精度に応じて、様々な材質(超硬、CBN、サーメットなど)やコーティング、刃先形状が設計されています。このカスタマイズ性により、ステンレスやチタンといった難削材の加工においても、工具寿命を延ばしつつ、高品質な穴あけ加工を実現できます。

従来の穴あけ工具とトレパニングツールの違い

従来の穴あけ工具とトレパニングツールは、加工から得られる効果まで、多くの点で根本的な違いがあります。これらの違いを理解することで、トレパニングツール導入のメリットが明確になります。

従来の穴あけ工具とトレパニングツールの違い

従来のドリル加工では、穴になる部分の材料をすべて削り取り、切りくずとして排出します。φ50mmの穴を開ける場合、直径50mm分の材料をすべて切削する必要があり、大きな切削抵抗と発熱が発生します。

トレパニング加工では、中心部に円柱状のコア材を残しながら、外周部分のみをリング状に切削します。同じφ50mmの穴でも、実際に切削するのは外周部分だけなので、切削面積を大幅に削減できます。

切削負荷と工具寿命の違い

従来のドリルでは、特に大径穴加工において切削抵抗が非常に大きくなり、工具の摩耗が激しくなります。特に難削材では、工具交換頻度が高く、ランニングコストが課題となっていました。

トレパニングツールでは、切削面積の削減により工具への熱負荷と機械的負荷を同時に軽減できます。その結果、工具寿命の大幅な向上が期待でき、特に高価な超硬工具やCBN工具においてはコスト削減効果が顕著に現れます。

加工精度と表面品質の違い

従来の深穴加工では、工具の長い突き出しにより工具のたわみや振動が発生しやすく、これが穴の真円度や表面品質の悪化を招く要因となっています。

トレパニング加工では、外周部のみを切削するため切削抵抗が分散され、従来の深穴加工と比較して工具への負荷が軽減されます。また、中心部のコア材が残ることで、工具の動作が安定し、優れた真円度と表面品質を実現できます。

東鋼だからこそ可能なトレパニングツール製造

当サイトを運営する株式会社東鋼は、他社にはない技術と実績で、特殊トレパニングツールの製造において一歩先を行く存在です。特に、以下の3つのポイントで東鋼の特殊トレパニングツールについて語ることができます。

ハイスでの製作が可能!

靭性に関してはハイス製工具に軍配が上がります。そのため、工具の寿命向上を目的とする場合は、ハイス製工具の方が適している場合もございます。またハイスにもタングステン系やモリブデン系の2種類あり、炭素含有量や高温特性が異なるため、ハイスの中でもさらに特性を加味した上で、最適な工具材質を選定する必要があります。

当社ではお客様で使用されていた工具をお借りし、硬度調査、工具材質の検証を行い、適切な工具材質の提案を行っています。

特殊ハイス工具 設計・製造について詳しくはこちら>>

切削加工~熱処理~研削加工までの一貫生産体制

東鋼では、トレパニングツールの製作において切削加工→熱処理→研削加工まで全工程を社内で一貫生産する体制を構築しています。この一貫生産により、工程間での品質管理が徹底され、お客様のご要求に最適化された加工工程を実現できます。

一般的な工具メーカーでは各工程を外注に依存することが多く、品質のばらつきやリードタイムの長期化が課題となります。しかし東鋼では、全工程を自社内で管理することで、品質の一貫性確保と大幅なリードタイム短縮を実現しています。

特に複雑な形状のトレパニングツールにおいては、各工程での加工条件や仕様変更が必要になる場合がありますが、社内一貫生産によりリアルタイムでの工程調整が可能です。創業100年近く蓄積されたノウハウを活かし、お客様の加工要件に応じて最適な製作工程を設計いたします。

各工程における専門設備と技術力

東鋼の一貫生産を支えるのは、各工程に配置された専門設備と熟練技術者による高度な加工技術です。

切削加工工程では、ガンドリルマシンにより小径トレパニングツールにも対応し、NC旋盤でのシャンク部精密加工、マシニングセンタでの複雑形状加工を実現しています。特にガンドリル加工技術により、他社では困難な小径・深穴対応のトレパニングツール製作が可能です。

熱処理工程では、工具材質の特性を最大限に引き出すため、予熱から焼入れ、焼戻しまで最適な熱処理条件を設定し、トレパニングツールに求められる硬度と靭性のバランスを実現します。

研削加工工程では、円筒研削盤による同軸精度の確保、CNC工具研削盤シュッテおよびNCPによる精密な刃先形状加工を行います。特にシュッテの5軸制御技術により、複雑な刃先ジオメトリーも高精度で仕上げ、お客様の加工要求に完全対応したトレパニングツールを製作いたします。

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特殊精密切削工具.comによるトレパニングツールの特注製作事例

特殊精密切削工具.comが過去に製作したトレパニングツールをご紹介します。

 

トレパニングツール

こちらは産業機器業界で使用されるサイズがφ16×φ10×70のハイス製トレパニングツールです。お客様がNC旋盤でトレパニング加工を行いたいとご要望をいただきました。特殊精密切削工具.comではハイス無垢の丸シャンク形状のトレパニングツールを提案をしたところ、量産ラインでの加工に使用出来ました。

当社では被削材や加工径、加工機に応じて、様々なトレパニングツールの製作実績があります。刃数変更や超硬ロー付タイプの製作にも柔軟に対応をしておりますので、お困りの案件がございましたら、ぜひご連絡ください。

詳しくはこちら>>>

トレパニングツール(トレパニング加工)の開発・設計・製作なら、特殊精密切削工具.comにお任せください

当社では、創業100年近く、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドの工具を開発・製造してまいりました。お客様それぞれに世界一の究極の逸品の工具を作り上げることをモットーに最先端設備を揃えており、高精度な加工を実現する環境を整えてまいりました。工業界から医療業界と「人体から宇宙まで」幅広く、精度が必要な工具の納品実績が多数ございます。

トレパニングツールの開発・設計・製作なら、、「切削理論」と「材料特性」を熟知している特殊精密切削工具.comまでお問い合わせください!

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